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    2024.7.13

    Daoko 8thアルバム『Slash-&-Burn』インタビュー

    Daoko 8thアルバム『Slash-&-Burn』インタビュー 聞き手・文=つやちゃん

    前作『anima』から四年ぶりとなるフルアルバムは、初のセルフプロデュース作品。さらに、自らDTM(PC上で制作するデスクトップミュージックの略)で本格的にトラックを構築した初の作品でもあります。果たして、その変化がどのように影響したのでしょう? 進化し続けるDaokoミュージックについて、じっくり訊いてみました。

    聞き手・文=つやちゃん

    Daoko史におけるターニングポイント? DTMによって変化した音楽制作

    ——『Slash-&-Burn』というタイトルはどのように決まったんですか?

    Slash-&-Burn=焼畑農業、ですね。今回フルアルバムとしては四年ぶりのリリースとなってしまったんですけど、ずっと制作はしていたんですよ。ゆるやかにデモをストックしていた感じで。そういう新しい曲に加えて古くはインディーズ時代の曲をブラッシュアップして作ったものもあるし、キャリアの集大成ではあるかなと思って名付けました。昔の曲を入れようという時に、このタイトルだったら合いそうというのもあった。それに今回、初めてのセルフプロデュース作品なんですよ。

    ——それがまず今回の作品の面白いポイントなんじゃないかと思っていて、セルフプロデュースだからか、曲調はバラエティに富んでいるんだけどどれもDaokoさんらしい毒っぽさやちょっとグロテスクな空気が漂ってますよね。

    自分はマイナスの気持ちを起点に曲を作ることが多いからですかね。ネガティブな感情をネガティブなまま終わらないようにするために曲を書くというか。呪いを呪いのまま終わらせない。今回の作品はコロナ期間中に制作した曲も多かったので、すごくパーソナルな内容だし日常の吐露になっているところもあるのかな。当事者と第三者目線とを行ったり来たりしているような、独特の視点になりました。

    ——制作中は、悩まれていた時期も多かったですか? けっこう、重い歌詞も多いですよね。

    実際は、悩んでる暇もないくらい忙しかった! スランプで曲を作ってなかったとかではなく、タイアップで進めていた別の曲もいくつかあって、そういう仕事をしていたらあっという間に時間が経ってしまって。だからこそ、そろそろ自分のオリジナリティをいっぱい詰め込んだアルバムを作らなきゃなという気持ちが沸いてきましたね。

    ——ライブを観て思ったんですが、ダンサブルな曲が多いですよね。お客さんのノリが、ダンスミュージックのそれでした。

    結果的にダンサブルになったという方が大きいかな。今回はDTMで自分でビートを作ったんですけど、そうなると私はどうしても四つ打ちが好きだからエレクトロニックなサウンドになりますね。でも、編曲をお願いした方たちもダンスミュージック系の方が多かったから、やっぱり私自身がそもそもそういうモードだったのかな。

    ——ご自身でDTMをはじめたというのは大きいですね。そういった点で、今作はDaoko史においてもターニングポイントとなるのでは。DTMは誰かに教わったんですか?

    以前Ableton Liveの先生には教わってたんですけど、一度諦めて辞めちゃったんですよ。そもそもあまりパソコン得意な方じゃないし、でもその時に習ってたことをちょっと覚えていて、またやりはじめた感じです。(サンプリングサービスの)Spliceにはだいぶ助けられていて、あとは知識がなくてもプラグイン通せば良い音になることもあるし、そういったのに頼りつつなんとかやってますね。便利な道具を試しながら少しずつできるようになってきた感じです。

    ——ツールの進化が凄いから、以前と比べてますますやりやすくなってますよね。

    プラグインにプリセットとして入っているコード進行もあって、「GAMEOVER」はそのJ-POPコード進行を使っているんですよ。コードを自動生成してくれるスケーラーも使って、自分の好きなコード感をどんどん形にしてます。とにかくそういうのを駆使しながら今回のアルバムは作っていったんだけど、根詰めすぎちゃって、リリース以降は創作意欲がだいぶおさまっていたところ。そういう時は本読んだり絵を描いたりするんですけど、昨日久しぶりにまたDTM触ったし、ちょっとずつまた音楽の創作意欲が戻ってきてるのかな。

    ——ちなみに、今作のビートメイクにおいてインスピレーション源となった作品はありますか?

    難しいですが、例をあげると…。x0o0x_さんの「月下」、フロクロさんの「星界(Be, be, be, be! / SEKAI)」、ALI PROJECTの「月蝕グランギニョル」、あとはrei harakamiとかです。自己分析では、オートチューンが多いのはボカロやネット発祥の曲からの影響で、ゴシックな雰囲気は昔から好きなアリプロ(ALI PROJECT)の影響、サウンド感はUKハウスの影響を受けていますね。

    ——なるほど。今回、どの程度ビートを組んだ状態でプロデューサーに渡したんですか?

    データとしては、トラックと声のパラデータをお渡ししました。そもそもお願いした編曲者さんたちの楽曲が好きなものばかりなので、「その方それぞれのコブシ全開でお願いします!」というスタンスで拙いデモをお渡ししましたね。人によっては、構成などに展開をつけてくださった方もいらっしゃいました。自力だと構成や展開を作るのがまだ思うようにいかないので、編曲者さんからのリクエストがあるととてもありがたいし、嬉しかったです。

    ——今作で、DTMが一番活躍した曲はどれでしょう。

    「天使がいたよ」かな。初めて自分を編曲にクレジットした曲です。HIDEYA KOJIMAさんが、編曲をブラッシュアップするようなアレンジの仕方をしてくださったから、作りとしてはけっこうデモに近いんですよ(と言って手元のスマホでデモを流す)。

    ——あぁ、近いですね。思ってたよりだいぶ近い。

    そうなんですよ。これは、DTMに慣れてきて急成長した曲かもしれない。あと、「GAMEOVER」もそうかも(と言って流す)。

    ——なるほど、これも近いですね。「GAMEOVER」はすごくボカロっぽいメロディですよね。

    ですよね。この時、かなりボカロ聴いてたからかも。でも一旦、DTMに関しては音楽知識がない中でスキルを上げていく限界まで来ちゃった気はします。これ以上DTMをやっていくなら、ちゃんと音楽知識を勉強しないといけないですね……。ゆくゆくはやりたいけど。でもギターもなかなか巧くならないし、ゆくゆく極めたいシリーズがいっぱいあるんですけど(笑)。自分でできるのがカッコいいと思ってるタイプなので。

    ——でも、そうやってイメージを具現化するスキルがどんどん高まっていくと脳と身体が同期していくというか、思い描いたものをかなり高い精度で形にしていけるわけじゃないですか。ますます楽しみですよね。

    DTMに関してはまだまだむず痒い気持ちですね。それに楽器もできるようになりたいし、全部をミックスしていきたい。

    ——作品としては、今作でどの程度の手応えをつかみましたか? 今後、どんな方向に向かっていくんだろうかと。

    売れる曲については正直全然分からないですけど、でも作品の方向性としては一部からは好評だったと思うので、これをさらに突き詰めていきたいんですよ。今回完全に自分の作りたいものをありのまま作ったし、それで大丈夫なのかもしれない、とは思いましたね。もちろん、魔法をかけてくれるような編曲者さんを呼んだからなんですけど。デモの時点で自分の音楽に感動することってまだほとんどないので、そこまでのレベルに持っていきたい。今はまだ、自分の作ったトラックに対して「これで大丈夫かな……」って感じだから。

    ——リリース前はだいぶ不安でしたか?

    どちらかというと、聴きすぎてもう分かんなかった。セルフプロデュースだとノイローゼ気味になるというか、もう客観的に聴けなくなるんだなというのに気づきましたね。そこはちょっと問題かな。誰かの意見が欲しい! ってなる。今回初めてですごく勉強になったから、今後は何かしら対策を打とうと思います。それに、マスタリングも自分で入ったんですよ。

    ——マスタリングは、具体的にどういう役割だったんですか?

    編曲者さんとミックスのエンジニアさんがいて、そこに私が入って三人の意見をまとめてからマスタリングエンジニアに投げるというのを、特に「ONNA」に関しては十何回繰り返しました。皆こだわって、ぎりぎりまで追い込んでやりましたね。私はハイが強いのがあまり好きじゃなくて、どちらかというとローが強くてハイは気持ちいい程度の音が好みなんです。基本的に、今回のアルバムはそれが全体的に反映されていると思う。

    ——マスタリング監修としてまとめ役をするということは、Daokoさんのそういった意見も反映していくわけですよね?

    「どう思いますか?」って訊いて皆の考えの中心を取りつつ、そこに自分の意見も添えるという感じです。もちろんマスタリングだけでなくてミックスの作業においても同じことを行なっているので、今回は曲を録って終了、という感じではなかった。本当に最後のギリギリまで詰めてました。だからなおさら、もう聴きすぎて分からなくなったんですよ(笑)。

    ——セルフプロデュースをするようになって、Daoko像を操作していくことに関しては何か変化がありましたか?

    いやぁ、分からないですね……。でも一応Daoko像みたいなものを動かしている意識はあって、Daokoが選びそうなものも意識して選ぶようにしていますけど。

    ——いまリスナーの方々が描いているDaoko像と、Daokoさんの中のDaoko像というのは、どの程度乖離があると思いますか?

    全然分からないな……どうだろう?! 今、ちょうど転換期な気はしますね。ライブでも長めにMCしてみたりとか、今まで見せてこなかった面を試しながら出しはじめている時期で。VTuberさんがコメントを読んでいくじゃないですか。あのイメージを取り入れてみたんです。でも、乖離してた方がカッコいいかなとも思う。あまり寄り添いすぎるのも違うし。

    再燃したボカロ熱、ボカロPたちとの交流

    ——DTMを通して、クラブミュージックとボカロミュージックというDaokoさんの好きな二つの音楽がこれまでとは違った形で融合してきている印象です。

    最近また、かなりボカロを追ってるんですよ。それに、その二つのシーンって今クロスオーバーしはじめているし、それこそ原口沙輔さんみたいな人は人気ですよね。ボカロPさんたちと話してると、クラブでプレイしたいって人が増えてきてるのを凄く感じます。ナードなお客さんたちの間で、クラブで踊りたいっていうニーズが高まってきてる。コロナが明けて以降、個人的主観ではありますが、特にエイジアとかの箱を中心に起きている現象で、そういった若い層の方たちを興味深く見ています。

    ——クラブミュージックとボカロミュージックの両要素を並列に取り入れる近年の潮流を以前から先駆的にされていたのがDaokoさんだと思うんですが、それに近い話でいうと「天使」という概念も昨今流行っているじゃないですか。あと、青~水色といった系統の色使いもすごく流行っていますよね。そういった面でもDaokoさんは時代を先駆けていたんじゃないかと思うんです。今作に限らず、Daokoさんはこれまでも天使のモチーフや青色、退廃的で浮遊感のある感覚にこだわりながら表現されてきました。

    確かに、最近「天使」がすごく流行ってますよね。SNSの普及もそうだし、経済面においても生きづらくなっている中で、若い世代は凄くもがいているように見えます。その中で救いとして求めているものが具現化されたのが、天使だったり青色・水色系統だったりするのかな。あと、そもそもそういった時代の空気を感受できる人が増えているとも思います。十年周期くらいで、カルチャーがリバイバルしているというのもあるかもしれない。今のボカロの盛り上がりを見ていると、米津玄師さんがハチだった時代やヒトリエのwowakaさんが活躍されていた時代のボカロのサウンドをちゃんと感じるんですよ。

    ——そもそもDaokoさんは、去年なぜ突然ボカロ熱が再燃したんですか?

    ボカロもやっぱり周期があるじゃないですか。ちょっとボカロの波が落ち着いていたところに最近またTikTokやプロセカ(「プロジェクトセカイ カラフルステージ!」)経由で流行りはじめて、オタクな要素がちょっとファッション的にオシャレだよねっていう感じになってきてるのも大きいと思います。この前来日したビリー・アイリッシュもちょっとオタクっぽい格好をしてたけど、そういうのがコロナ明け以降に盛り上がってきてる気がする。若い世代は普通に新しくてカッコいいものとしてボカロを聴いていて、私の世代がまた懐かしくて聴いている、みたいな感じ。あとは個人的な話だと、ボカロPの羽生まゐごさんがきっかけなんですよ。今作でも羽生まゐごさんには「捨てちゃってね」の編曲をお願いしているんですけど、ゲーム「スプラトゥーン」をやろうと誘われてDiscordに入ったら、そこで何人かのボカロPの方々がいらっしゃって。そうやって若い世代の方々とやり取りしていた流れで、今のボカロ曲を聴くようになったんです。

    ——Daokoさんより、下の世代ということですよね。

    そう。私はぎりぎりZ世代の定義に当てはまるらしいんですけど、もっとど真ん中でZ世代の方たちです。でも、それだけ一回り違うともう全然違う。ジェンダーレスって言ってしまったらなんか違うのかもしれないけど……皆オラつきがなくて、淡々としてる。あと、皆DTMで曲を作ってるじゃないですか。ゲーム仲間と、「皆でスタジオ入ろう~」ってノリになって、スタジオに入ったんですけど、「初めて生のドラム見ました!」っておっしゃってる方もいたりして、いい意味で度肝を抜かれたんですよね。ライブもそんなに行ったことないって言ってて、大人しい方たちが多い印象。でももちろん私なんかが何かを押しつけようとは思わないし、そもそも下の世代と関われること自体が嬉しいですし。

    ——文化圏によってもだいぶ違いますよね。

    そうそう、「YAGI」とかのイベント周辺に集ってらっしゃるファッション系の人たちだと、ちょっとまた違うとは思います。

    ——でも、そういった年下のボカロPの方々と集う一方で、年上のバンドの方々とも一緒にされているDaokoさんの幅の広さが面白いですよね。全く違うコミュニティじゃないですか。

    私自身は、もともと10代の頃から音楽やっていたから大人の方との交流が多かったんですよ。それでカッコいい音楽をいっぱい教えてもらったし。だから、下の世代と一緒にいると、おせっかいじみていて嫌だなと思いながらも、私も同じ役割ができたらいいなと思っています。どうしても人格・人柄はコミュニティによって似たような傾向になりますよね。バンドの方々はバンドの方々だし、ギーク寄りの年下の人たちはそういう人だし。私は完全にオタクの人なんだけど、昔から浮遊してるんですよ。音楽においては浮遊して誰とでも溶け込んでいけるから、そこは自分のいいところかも。

    ——浮遊して溶け込んでいける。稀有な存在ですね。

    オタクに優しいギャル、みたいな存在がいつも周りにたくさんいてくれたから(笑)。面白がってもらえた。

    アルバム全曲解説! Daokoらしさの秘密とは

    ——1曲目の「天使がいたよ」はダンサブルな曲ですね。キックが凄く気持ち良い。

    DTMをがんばった曲です。この曲での「天使」は、希死念慮の暗喩なんですよ。精神的にダウナーになっていた時期で、昼間に外を歩いていたら希死念慮に襲われて。高いビルをふいに見上げたら天使がいる絵が浮かんだので、MVにも反映しました。初めて編曲に名前が入った曲だし、MVも自分でラフを作ってつなげていくという点ではボカロPさんの影響を受けています。

    ——「FTS」は、小袋成彬さんらしい音のテクスチャが素敵ですね。「ドーキンス」という固有名詞が出てきたり、韻も踏みまくっていたり、聴きどころの多い曲だと思います。

    これはもう小袋さんの力ですね。私、小袋さんの作る音色(おんしょく)が好きなんですよ。明らかに音がいいじゃないですか。リチャード・ドーキンスは、彼の本が好きで。ミーム=情報遺伝子ということについて書いている人なんですけど、音楽も言ってみたら情報遺伝子じゃないですか。その辺りでシンパシーを感じて、入れました。俯瞰視点とパーソナル視点が次々と出てきて、そのあたりが自分らしいところかも。韻が固いのは、志人さんを意識したところがあります。

    ——「SLUMP」の歌詞は、色々な想いを吐露してます。

    これは、なんだかんだ最終的にキスがしたいだけの曲になってるんですけど(笑)。アルコールに逃げていた時の曲ですね。缶チューハイでは酔えない時期だった。クサクサして作りました。だけど、ミックスはかなりこだわっています。

    ——この冒頭の三曲は、割とダークなことを歌っていますよね。

    そういうダークなことを歌ってもいいように、独立したってところもありますよね。メジャーの時はもうちょっと皆で作って進めていくような形だったので。でも、Guru Connectさんはこの曲を聴いて「Daoko大丈夫か?」と思ったそうです(笑)。共通の友人談なのでこの曲でそう思われたかはわからないんですけど…。

    ——次の「BLUE GLOW」はファンキーで艶感のある曲です。

    (HIDEYA)KOJIMAさんの編曲で、凄くグルーヴィな雰囲気になりました。この曲は、16歳くらいの時に作った曲なんですよ。歌詞は、今となっては恥ずかしくて書けない内容。「EAT ME」とか今は絶対言えないから(笑)。恋愛もたくさんしてたし、ピチピチで色気がありますよね。色っぽいと思います。

    ——「GAMEOVER」は、メロディラインにボカロミュージックの雰囲気を感じました。

    コード進行に引っ張られて生まれた世界観で、プラグインのプリセット「J-pop11」を使っています。ボカロの影響はありますね。あと、アリプロの影響もあるかもしれない。飼ってた黒猫が死んだ直後に作った曲で、でも別に黒猫に向けているわけではないです。強い気持ちのメンヘラになっていた時期で、「気軽に呪ってこ☆」のギャル精神がありました。もはや病みすぎて、「気軽に呪っていこう~!」という呪詛の曲。死×踊る、みたいなテーマです。

    ——次の「捨てちゃってね」も「こっそりと呪う」と歌っています(笑)。

    これは、皮肉たっぷりにこっそりと呪う曲(笑)。歌詞はひたむきで切実な女性を表現していて、「部屋とYシャツと私」的な怖さがある。ループミュージックっぽいデモだったんですけど、ボカロPの羽生まゐごさんのアレンジで凄くイメージが変わりました。MVは、大好きな漫画家の小骨トモさんが合うだろうなと思ったのでお願いしました。

    ——「好×2+嘘×2」は何て読むんですか?

    ハオハオライライ! 音感から浮かんだなんちゃって中国語だから中華圏の方にはどう聴こえるのかは心配なのですが、語感が気に入ってるんですよ。響き優先で作っていて、メロディラインも中華風です。フィールドレコーディングをしていて、色んな音を録って入れてます。クラブイベントで知り合った食品まつり(a.k.a Foodman)さんと初めてご一緒しました。食まつさんは音が良いですよね。理想の音色です。

    ——「あぼーん」は、これまでも度々一緒にされているDJ6月さんのトラックですね。

    DJ6月さんはよくトラックを送ってくださるんですけど、そこから使わせてもらいました。この曲は、なぜか中国でけっこう聴かれてるんですよ。GINZA SIXで個展をした時に作っていた曲で、個展のタイトルが「the twinkle of euphoria」だったんです。それに合わせて、サイケでユーフォリアな気持ちを反映した曲。

    ——「NovemberWeddingDay」は今作の中でも一番ポップですね。

    2016年に、三姉妹の次女の結婚式で作った曲ですね。私は結婚したことがないので想像で作りました。だから、感情移入はできないんですけど。姉への提供曲、という捉え方だとしっくりくるかも。結婚式タイアップですね(笑)。でも結婚式ではうまく歌えなくて、家に帰って号泣しました。いつものライブよりずっと緊張したし、だめだった。「November」という部分を変えなかったのは、あくまで次女のために書いた曲だからです。皆さんも、結婚式でぜひ使っていただきたいですね。

    ——この曲は、アルバムのどこに入れるのかが難しかったのでは?

    めちゃくちゃ難しかったですね。色々シミュレーションした結果、ここに落ち着きました。マネージャーと二人で改めて聴いてて、良い曲だねって言って入れましたね。

    ——で、次の「ONNA」でまたDaokoワールドに引き戻されるという(笑)。

    これもまた自分の色が出ちゃいましたね。姉は結婚式、一方その頃私は……? みたいな曲(笑)。個人的に歌舞伎町ソングでもあったり……。トー横キッズ界隈やZ世代のSNSを見たりしてインスパイアされた部分もあるかもしれませんね。若い女(の子)をイメージして書いた曲です。

    ——この曲は、テクスチャが凝ってますね。

    マスタリングに一番時間がかかった曲です。デモは簡素なループミュージックで、Guru Connectさんが素敵にしてくださいました。編曲の力を感じた曲です。

    ——「なんちゃって」と「赤目のビル」は、Daokoさんのインディーズ時代の感触があります。

    そうなんですよ。だからこそ最後にまとめちゃいました。「なんちゃって」はDTMを始めたての頃の曲です。つたないデモだったんですけど、これもTAARさんの手でだいぶ印象が変わりました。

    ——「赤目のビル」は、デビュー以降のDaoko芸術が全て詰まっているような印象を受けました。非常にDaokoさんらしい曲。

    「赤目のビル」は好きって言ってくださる方が多くて、人気の曲ですね。高層ビルの上の方に、飛行機に向けた赤いライトがついてるじゃないですか。家からビル群が見えるんですけど、夜に仕事をしている時に部屋からそれを見ていると赤い目に感じて。結局変わらず音楽を続けていくんだろうな、という曲でもあります。

    ——こうやって振り返ると、新旧色んな時代の曲が繋がれていて、焼畑農業というのもなんとなく分かってきました。ダンサブルなんだけどずっと暗い、というバランスがDaokoさんらしいですね。

    性格が暗いからしょうがないですね(笑)。しかも、別にそうしようと狙ったわけじゃなくて日常でふと感じたことをメモして作った結果、自然とそうなってるので。

    ——面白いのが、そうやってDaokoさんの素が出ればでるほど、なんか今っぽくなるんですよね。今の若者の空気とリンクするというか。そういう、時代がまわった感が感じられる。だからこそ若い子にも聴いてもらいたいアルバム。

    聴いてもらいたいですね。コロナ明けに一番初めに動いたのがクラブだったというのもあるけど、私があの辺からクラブイベントに出るようになったのもあって、少しずつ若いリスナーとの接点が増えてきてる気もします。

    ——今後はどのような活動をされたいですか?

    今回のソロライブが好評だったので、同じメンバーでまたソロツアーしたいな。もちろん、QUBITとの両立も。ギターも練習したいし、DTM力も上げたいし、とにかく音楽含む表現すべての解像度をまだまだあげていきたいなと思っています。

    Daoko 8thアルバム『Slash-&-Burn』

    ★配信リンク:http://daoko.lnk.to/slash_and_burn

    ★CD ECリンク [初回プレス版のみ特典シール2枚付]

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